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東京高等裁判所 昭和25年(う)2999号 判決 1950年12月07日

被告人

阪東稔

外一名

主文

原判決中被告人阪東稔、同倉嶋昭雄に対する部分を破棄する。

本件を横浜簡易裁判所に移送する。

理由

被告人両名の弁護人小原栄の控訴趣意は同人作成名義の控訴趣意書と題する末尾添附の書面記載の通りであり、これに対し当裁判所は次の通り判断する。

論旨は、要するに、原審弁護人は被害者に対する完全な弁償をなしえたのでその受領証を情状証拠に提出し度いからとの理由で弁論再開の申請をしたのに原審は之に対し、何等決定することなく予定の判決言渡日に突如として、判決の宣告をしたのは審理不尽判決に影響を及ぼすべき法令違反及び弁護権の不当判限に各起因する違法の判決であるから破棄を免かれないというにある。よつて記録を調査するに、本件は昭和二十五年六月二日弁論を終結し判決は同月九日言渡すべき旨告げ閉廷したが、同月五日弁護人から弁論再開申請が提出されたに拘らず原審は、これに対し何等の決定を与えないで同月九日本件判決を言渡したことは所論の通りである。

さて刑事訴訟規則第二一四条、刑事訴訟法第三三三条第一項その他刑事訴訟法全体の構造から考えると、新刑事訴訟法は旧刑事訴訟法と異なり、当事者に弁論再開の請求権を認めているから、いやしくも被告人又は弁護人から終結した弁論の再開を請求するときは、請求を容れて再開するか、又は理由なしとして請求を却下するか、いずれかについて決定をしなければならぬと解するのが相当である。然るに全記録に徴するも原審は所論再開請求に対し何等の決定をもした形跡を発見できない。これは違法である。そして若し弁論が再開せられ、所論のように本件被害の金額が弁償せられた事情が判明した場合には、その情状によつては原判決に影響を及ぼすこと明らかである。然るに、原審は、前記の通り所論弁論再開請求に対し何等の決定をもしなかつたものであるから、到底破棄を免かれない。論旨理由あるものである。なほ本件は当審に於て直ちに判決することができないから、本件を横浜簡易裁判所に移送すべきものとする。

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